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政治の隘路

本書は、政治学の視野から、自由民主主義体制の中心理論である多元主義論の歴史的展開を、哲学的分野から実証的分野まで広範な領域を射程に収め通史的に分析する。フィッギス、バーカー、ラスキをはじめとする20世紀初めのイギリス多元的国家論が、第二次大戦後隆盛を極めたアメリカ多元的民主主義論を経て、フーコーに代表される近年のポスト・モダンへと到る流れを克明に描写し、いまや隘路にはまりつつある20世紀の政治の成果と限界を浮かぶ上がらせ、ボーダレス化する冷戦後の世界に鋭い問いを投げ掛ける。

【目次より】
序 政治が失おうとしているもの
序章 二〇世紀末の多元主義論
一 多元主義とリベラル・デモクラシー
二 多元主義と「政治」
三 本書の構成
第一章 イギリス多元的国家論
一 伝統の形成とリベラリズムの革新
二 多元的国家論の萌芽
三 伝統の再生へ 多元的国家論の諸相
(1) ジョン・N・フィッギス (2) アーネスト・バーカー (3) ハロルド・J・ラスキ (4) G・D・H・コール
四 多元的国家論の終息
第二章 多元主義論の変転
一 アメリカにおける多元主義論の受容
(1) 「国家」と「人民」 (2) 病理から批判理論へ
二 多元的国家論への対応
(1) 初期の受容と論点の形成 (2) 選択的受容と全面的批判
三 多元主義論と「科学」
四 多元主義論と「政治」の動揺
第三章 多元的民主主義論と政治科学
一 多元主義論の定着と政治科学の台頭
(1) 多元主義論の定着 (2) 政治科学と多元主義論
二 ロバート・A・ダールと多元的民主主義論
(1) 市場社会主義からポリアーキーへ (2) ポリアーキーの定式化 (3) ポリアーキーの分析 (4) 多元的民主主義論における「政治」
三 多元的民主主義論への批判
四 多元的民主主義論の変容
(1) 問題の析出 (2) 多元的民主主義論の修正 (3) 「保守化」批判の功罪
第四章 多元主義と多元化
一 文化的多元主義論と市民社会論の射程
二 多文化主義論と「政治」の相克
(1) 多文化主義論と集団の権利 (2) 「差異の政治」と集団のアイデンティティー
三 ポスト・モダニズムと「主体」の問題
(1) 個人のアイデンティティーと集団のアイデンティティー (2) ボスト・モダニズムの「主体」批判
四 ポスト・モダン多元主義論
(1) 「リベラル・プルーラリズム」への批判 (2) ポスト・モダン多元主義論の諸要素
終章 政治の陰路と政治的想像力

あとがき
参考文献