「危機の政治学」既刊・関連作品一覧

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危機の政治学

朝鮮半島有事がリアルに予感されるようになった今、「非常事態」や「緊急事態」と呼ばれるものをどう考えればよいのか、という問いは切実さを増している。そのような状況の中で誰よりも有益な問いを示してくれるのが、本書の主人公カール・シュミット(1888-1985年)にほかならない。
シュミットほど物議を醸し、危険視されてきた思想家はいない。その著作を批判的に論じた者の名を挙げるだけでも、ベンヤミン、アレント、デリダ、ネグリ、ジジェク、アガンベンなど、枚挙に暇がない。憲法学(公法学)を専門とするドイツの法律家だったシュミットは、1914年に『国家の価値と個人の意義』で教授資格を取得し、ボン大学、ベルリン商科大学などで教鞭を執ったあと、ヒトラーが政権を掌握した1933年からベルリン大学教授に就任した。第一次世界大戦での敗戦以降、ドイツがワイマール共和制の崩壊に突き進んでいく中、シュミットは独自の思想を練り上げ、幾多の著作を発表する。その代表が『政治的ロマン主義』(1919年)、『独裁』(1921年)、『政治神学』(1922年)、『現代議会主義の精神史的状況』(1923年)などである。これらの著作でシュミットはワイマール体制に象徴される議会制民主主義や自由主義を批判し、ナチス政権の法学理論を支えた。それゆえ、戦後には不起訴になったものの、ニュルンベルク裁判で尋問を受けるなど、「ナチスの御用学者」として非難の的となる。
だが、政治の本質を「友と敵」の峻別に見る理論、のちにアガンベンによって注目される「例外状態」の理論など、シュミットが展開した思想は、今日なお大きな示唆を与えてくれる。本書は、唯一無二の特異な思想家カール・シュミットの生涯と思想を分かりやすく解説する。具体的な史実との関連の中で、戦後の『大地のノモス』(1950年)、『パルチザンの理論』(1963年)などの著作まで、全主要著作を読み解き、今日の世界情勢を考えるヒントを提供する。第一人者だからこそなしえた他に類を見ない決定版が、ここに誕生した。