「中原淳一 美と抒情」既刊・関連作品一覧

中原淳一 美と抒情

 少女画といえば、今も多くの人が中原淳一のことを思い浮かべるのではないでしょうか。竹久夢二から中原淳一に、そして中原淳一から内藤ルネに至る、日本の少女画作家の系譜はよく知られています。
 戦前から戦後にかけて人気少女雑誌「少女の友」へ、また自ら創刊した服飾雑誌「それいゆ」などに数多くのおしゃれで個性的な美人画を発表し、多くの若い女性たちを魅了した抒情画家・ファッションイラストレーターが中原淳一(1913-1983)です。
 中原淳一は、12歳で母と共に上京。中学生の頃から絵画が好きで、15歳(1928)のとき、甘美で鋭敏な描線で当代随一の挿絵画家・岩田専太郎(1901-1974)に会って教えを乞い、抒情画を描き始めました。また、枕屏風を張り替えて、抒情画を描いたり、和服の帯に花模様を描いたり、人形作りにも熱中して、大人たちを驚かせました。
 本書は、若くして才能を認められ、戦前・戦後の40余年にわたって、抒情画家、人形作家、ファッションイラストレーター、服飾デザイナー、手工芸家、装丁家、スタイリスト、演出家、編集者、シャンソン作詞家、エッセイストとして八面六臂の活躍をし、戦後日本の繁栄期までを駆け抜けた「美の巨匠・中原淳一」の足跡を辿ります。 
そして、先行する岩田専太郎、竹久夢二、蕗谷虹児(ふきやこうじ 1898-1979)といった抒情画家たちからの影響などにも言及し、多方面に展開した彼の才能を貫く独自の造形・色彩・デザイン感覚、装飾技法を、本人の言葉や多彩な作品、関係者たちの指摘などから、時代との関わりと併せて浮き彫りにしていきます。
 また、現代の少女劇画の先達ともされる、モダンで、しなやかで、しかもクラシックな美を編み上げる、彼固有のデザイン意匠の魅力を、その生き方のなかに探っていきます。
2013年に中原淳一は、生誕100年および没後30年を迎えます。
すでにフィクションとノンフィクションを織り交ぜた中原淳一についての本が刊行されていますが、本書は緻密な取材に基づく評伝であり、ご遺族の全面的なバックアップの下に取材、執筆がなされ、また貴重な作品も掲載される、定本・中原淳一伝です。