「人間関係の心理学」既刊・関連作品一覧
他人とまともに視線を合わさない人がいる。日本人には、対人恐怖症さえ少なくない。人びとが真の人間関係を見失ったのは、これと無関係だろうか。著者は、たんに和気あいあいの「よい人間関係」ではなく、「ほんとうの人間関係」を模索してきた。まなざしを、ただ相手に向けるのではない。瞳は“人見”であり、たがいに瞳をとどかせるのだ。その重さを説き人が真の人間関係を見出してゆく過程を描き出す。対人関係トレーニングでの、著書の豊富な体験をもとに、人間一般より、かけがえのない一人一人の人間のあり方を説く本書は、さまよえる現代人のための人生読本である。
とどかない視線――他人の眼を見つめることは勇気がいる。まして他人のまなざしを自分のひとみで受けとめることは、身もすくむ思いだ。……それはしかし、そのまなざしが、私のひとみに、私のなかまでとどいたときのことだ。視線がこちらに向かってはいるが、とどいていないとき、その人の眼は、たんなる眼球という物体にすぎない。そんなとき、その人の眼は生きた眼というより、瀬戸物のように見える。Tグループのなかでは、だれもがこうした経験をするが、日常の対人関係のなかでも、少し気をつければ気がつくにちがいない。――本書より