「三国志の英傑」既刊・関連作品一覧
非情にして有情の大人曹操、義に篤い劉備、智謀の大軍師諸葛孔明。関羽・張飛の任侠が燃え、眼光烱烱孫権は江東に座る。漢の滅亡から三国時代へ、天下動乱の世を生き抜く英雄・傑物の魅力を活写。
文人曹操――曹操が20を少し出たばかりで、博い学識を備えていることが条件とされる議郎という官に取り立てられたことによっても、彼の学識がなみなみならぬものであり、当時すでに世に認められる程であったことがわかる。彼は古典に造詣が深かったが、とくに兵法の学を好み、後に諸家の兵法を集めて『接要』と名づけ、一方、孫子の兵法に注釈を施した書13篇を著わしており、その一部は今日に伝えられている。曹操は、このように学問を好んでいたが、そればかりではなく、詩人としてもなみなみならぬ力量を備えていた。彼は従軍中にも、高みに登ると必ず詩を賦し、新作が成るときまって管弦の伴奏を求めて唱った、と伝えられる。こうした曹操の面目を、宋の詩人蘇軾(そしょく)は、「酒を灑みて江に臨み、槊を横えて詩を賦す、固に一世の雄なり」(「前赤壁賦」)と歌っている。――本書より