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家族関係を考える

家族における人間関係は一様なものではない。一人の異性を選択することによって成立する夫婦というヨコの関係、血のつながりで運命づけられた親子というタテの関係、さらに兄弟姉妹、親戚、こうした複雑さから、思いがけない対立や葛藤が生じてくる。家庭内暴力、離婚……。家族のあり方は、われわれの生きていく基盤として今、根本から問いなおされなければならない。(講談社現代新書)


家族における人間関係は一様なものではない。一人の異性を選択することによって成立する夫婦というヨコの関係、血のつながりで運命づけられた親子というタテの関係、さらに兄弟姉妹、親戚、こうした複雑さから、思いがけない対立や葛藤が生じてくる。家庭内暴力、離婚……。家族のあり方は、われわれの生きていく基盤として今、根本から問いなおされなければならない。本書は、日本社会の特質を踏まえつつ、母・父・子の深層の関係を追求、われわれが自立した人間として個性的に生きる場としての家族のあり方を模索する。

危険思想――夫婦の絆は親子の絆と十字に切り結ぶものである。新しい結合は、古いものの切断を要請する。若い二人が結ばれるとき、それは当然ながら、それぞれの親子関係の絆を切り離そうとするものである。一度切り離された絆は、各人の努力によって新しい絆へとつくりかえて行かねばならない。この切断の痛みに耐え、新しい絆の再製への努力をわかち合うことこそ、愛と呼べることではないだろうか。それは多くの人の苦しみと痛みの体験を必要とするものである。このような努力を前提とせず、ただ二人が結ばれたいとのみ願うのは、愛などというよりも「のぼせ」とでも呼んでおく方が妥当であろう。他の何事をしてもいいが、「愛する二人が結ばれると幸福になる」という危険思想にだけはかぶれないようにして欲しい、と願いたくなってくるのである。――本書より