「逸楽と飽食の古代ローマ―『トリマルキオの饗宴』を読む」既刊・関連作品一覧

  • 電子あり
逸楽と飽食の古代ローマ―『トリマルキオの饗宴』を読む

『トリマルキオの饗宴』は、古代ローマが生んだ風刺小説の金字塔『サテュリコン』の最も有名な場面である。そこに描かれた山海の珍味と美酒、かしずく少年奴隷たち、黄金の腕輪と銀の尿瓶……解放奴隷の成金富豪が催す饗宴の一部始終を解読。厖大な文献、考古・美術資料を駆使して、繁栄を謳歌するネロ帝時代の社会と、人々の人生観を再構築する。(講談社学術文庫)


風呂につかって、遊び、笑う。
それが人生だ!
ネロ帝時代の大宴会を再現。古代風刺小説の金字塔『サテュリコン』のハイライトシーンを徹底解読。

『トリマルキオの饗宴』は、古代ローマが生んだ風刺小説の金字塔『サテュリコン』の最も有名な場面である。そこに描かれた山海の珍味と美酒、かしずく少年奴隷たち、黄金の腕輪と銀の尿瓶……解放奴隷の成金富豪が催す饗宴の一部始終を解読。厖大な文献、考古・美術資料を駆使して、繁栄を謳歌するネロ帝時代の社会と、人々の人生観を再構築する。

ネロの治世前半は文字どおり平和と繁栄の時代だった。都の住民は市民権をもつ限り、どのように貧しくとも最低限の食糧が皇帝によって保障されていた。市民の最大の関心事は、いかに生きるかというよりもいかに楽しむかであった。したがって、歴代の権力者たちは娯楽施設の整備に余念がなかった。最低限の食糧給付と催し物の提供、つまり「パンとサーカス」こそが皇帝の都における義務であり政策だった。(本書・第一章より)

※本書は、1997年に中央公論社より刊行された『トリマルキオの饗宴―逸楽と飽食のローマ文化』を文庫化にあたり改題したものです。