満洲の中心都市・ハルビン。多くの日本人にとっては、伊藤博文が暗殺された都市として記憶されますが、それだけではありません。日本、ロシア、中国を中心に、波瀾の近代史を繰り広げた舞台でもあります。
始まりは、ロシアのアジア進出にあります。ロシアは東清鉄道を建設し、アジアの不凍港まで鉄道を開通させねばならなかった。その調査の過程で発見されたハルビンは、やがて東清鉄道建設の基地となり、ロシアの植民地となります。
ロシアの名物蔵相ウイッテの思惑、軍と鉄道会社の利害対立など、ハルビンの発見から植民、そして繁栄と混乱の社会と歴史が綿密に描き出されます。いわば、ヨーロッパとアジアの思惑、国際関係のるつぼとして、ハルビンはあったのです。
そこでは、中国人、日本人のみならず、ユダヤ人のコミュニティも形成され、「最も自由な国際都市」という側面もそなえてゆきます。
しかしながら、歴史は、このリベラルな都市を、そのまま許すことはありません。やがて日露戦争に突入。そして、中国による奪還と歴史はうねっていきます。
そうでありながら、では、鉄道建設で栄えたハルビンはなぜ、リベラルな国際都市の可能性を持つことができたのか。
本書は、ロシア側の未公開資料など、貴重な史料を広汎に発掘し、壮大なスケールで描く、満洲の近代史です。
加藤陽子(東大教授)さんが、「ロシアにとっての『坂の上の雲』が今ここに」と大絶讃! まれに見る本格歴史書を、堪能してください。
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