内容紹介
ここのところ「スマートスピーカー」の宣伝をよく目にします。名だたる企業が競うように発売し、これを導入すると、どれほど生活が便利になるかを伝えています。スマートスピーカーは「AIスピーカー」とも呼ばれるように、AI(人工知能)が搭載されています。囲碁や将棋でAIがプロに勝った、というニュースを聞くようになってから、もうずいぶん経ちますが、今や自動運転、投資相談、医療診断など、以前では想像もできなかった領域にAIは進出しつつあります。そして、30年以内にAIの知性が人間を超越する、という「シンギュラリティ(技術特異点)」仮説を唱える専門家さえ出てきています。
そこに待っているのは「薔薇色の未来」でしょうか? 便利さ、というものに目を奪われて、しっかり考えることなく、さまざまな判断をコンピュータに委ねてしまうことになって、だいじょうぶなのでしょうか?
本書は、半世紀近くにわたってAIの栄枯盛衰を間近で見てきた第一人者からの提案の書です。──先に進む前に、いったん立ち止まって、きちんと考えてみませんか?
現在のAIブームとも呼ぶべき状況は、1950~60年代の第一次ブーム、1980年代の第二次ブームに続く三度目のものになります。本書は、それらの歴史を振り返り、それぞれの時期に何が可能になったのか、何が不可能であることが分かったのか、そしてそれは今日に至って解決されたのか、といった点を分かりやすく整理します。
その上で、今、世界中で注目されるフランスの哲学者カンタン・メイヤスーの議論を手がかりにして、AIが目指しているのはどんな世界なのかを探っていきます。そこで明らかになるもの、それは「絶対知をもつ神に人間が近づいていく壮大なストーリー」にほかなりません。もしもそのストーリーが現実のものになったとしたら、「自由意思」や「責任」といったものはどうなるのでしょう?
AIとよく付き合うために、本書は大切な問いを投げかけます。
【本書の内容】
まえがき
第一章 機械に心はあるのか
第二章 汎用AIネットワーク
第三章 思弁的実在論
第四章 生命とAIがつくる未来
第五章 AIと一神教
目次
- まえがき
- 第一章 機械に心はあるのか
- 1 AIブームふたたび
- 2 生命と機械
- 3 ロボットという疑似生命
- 第二章 汎用AIネットワーク
- 1 脳型コンピューティング
- 2 シンギュラリティ仮説
- 3 クラウド・コンピューティング
- 第三章 思弁的実在論
- 1 相関主義と実在論
- 2 宇宙の安定性の根拠
- 3 物質・流動・生命
- 第四章 生命とAIがつくる未来
- 1 相関主義への疑問をめぐって
- 2 自由意思と責任のゆくえ
- 第五章 AIと一神教
- 1 救済/創造/ロゴス
- 2 選民による布教と情報伝播
- 3 一神教は超克できるか
- 第六章 AIの真実――論点の総括
製品情報
製品名 | AI原論 神の支配と人間の自由 |
---|---|
著者名 | 著:西垣 通 |
発売日 | 2018年04月10日 |
価格 | 定価 : 本体1,500円(税別) |
ISBN | 978-4-06-258675-7 |
判型 | 四六 |
ページ数 | 208ページ |
電子版製品名 | AI原論 神の支配と人間の自由 |
シリーズ | 講談社選書メチエ |