笑い、恋、夢。庶民の暮しに日本人の心を発見する柳田文芸論の白眉28篇!
古来日本人が絶えることなく語り伝えた昔話や伝説は、笑い、歌、夢が咲き誇る肥沃な物語の土壌であった。詩人として、花袋、藤村等と近代文学の青春を共にしながらやがて彼等の批判者となった柳田は、好奇心や空想力を衰弱させた自然主義に反し、庶民の暮らしの中にこそ真の文芸があると説く。文芸に関わる主要論考、随筆から近代文学が捨象した豊穣な世界に詩的直感を以て分け入る28篇を精選。
井口時男
柳田の民俗学は近代文学との深い交渉から誕生したのであって、その中心に、近代文学と同じまなざしを共有している。いわば、柳田の民俗学は近代文学の隣人である。(略)今日、近代文学はもう終ってしまったのではないか、というささやきがしきりに聞こえる。この「終焉」の時代に、「誕生」の時からの助言者であり批判者であった隣人の言葉に耳を傾けてみてはどうか。――<「解説」より>
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