やきものを愛し 酒を愛し 人を愛した天衣無縫
静かでうれいに満ちた美しさをもつ李朝彫三島扁壺、端正で気品のある中国陶磁の至宝、北宋汝官窯青磁輪花碗、枯淡なうちにほのぼのした明るさをたたえた信楽の壺、わが愛すべきやきものに寄せた『骨董百話』をはじめ数々の名随筆をのこした陶磁研究の第一人者、小山冨士夫。みずからもすぐれた陶芸家であった、その美への探究心をあますところなく伝える随筆集。
森孝一
信楽の楽斎窯(らくさいがま)では、「この土に少し酒を飲ませたほうがいい。ほろ酔いがいい」と独り言をいいながら轆轤を挽いていたという。<ほろ酔い>という表現は、いかにも小山の作品のかたちをいい得て妙である。人の性格も土の性格も、ほろ酔い加減の時が一番素直に現われるというのであろうか。そうした作陶は、まさに小山の天性のものであり、近代の陶芸家の中でもこれほど自分の個性を、しかも自然体で表現出来た陶芸家も稀である。――<「解説」より>
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