おばあちゃんにはじめてコンサートに連れていかれた少女は、そこでバイオリンの音色に心奪われます。「わたしも弾いてみたいな」。来る日も来る日もバイオリンのことばかり。
とうとうパパとママがバイオリンを買ってくれました。そして、レッスンにも通います。きびしい練習にも耐え、はじめは一生懸命。でも、やがて、「深い穴に落としちゃいたい」くらい、バイオリンが嫌いになってしまうのです。ところが、「あんたなんか、どこかに いっちゃって!」と、バイオリンをむんずと掴んだその瞬間、少女の心の中には、今までと違う感情が流れたのでした……。
・訳/髙田万由子さんからのメッセージ
フランス語の絵本の翻訳は、5年前にシリーズ3冊を訳して以来、2度目となります。
「ド・レ・ミ」は、娘にバイオリンを習わせている私にとって、非常に身近なテーマであり、まるで、私たち母娘の日常生活の一部を切り取ったような、そんなお話でしたので、翻訳の際はすらすら筆がすすみました。しかし、その中でも音楽用語は訳しにくい専門的な言葉があり、それをどうわかりやすくするかは苦労しました。また、原文では、あまり感情的な言葉が出てこないのですが、「嫌だ!」とか、「うれしい!」というニュアンスをはっきり感情で表して意訳しました。この絵本を通じて、子供たちに音楽の素晴らしさと夢を届けられたらうれしく思います。
・担当者のうちあけ話
原著はフランス語です。著者は音楽に造詣が深いようだし、イラストレーターは、なんとバイオリニストと兼業! ならば、翻訳も、その道に通じた人にお願いしたい、と思ったのが、髙田万由子さんに依頼したきっかけです。
お会いすると、髙田さんは、お嬢さんのバイオリンのおけいこのことを話してくださり、「まさに、『穴に落としちゃいたい』って感じなんですよ」とおっしゃって、まあ、バイオリンにしろ、ピアノにしろ、子どものおけいこ事では必ず通る道ですよね、と共感し合いました。ご自身の生活体験に引き寄せて訳していただき、それがとても効果的に作用したと思います。
1冊全体の流れについても細かい配慮があり、原著ではページをめくると飛躍があるようなところも、うまくおはなしがつながるように、日本語で工夫してくださいました。また、テレビの収録の合間に、気になるところがあるからと、
+ もっとみる