ルターとドイツ神秘主義 ヨーロッパ的霊性の「根底」学説による研究
エックハルトに淵源する「根底」(Grund)概念を辿ることにより、ルターがドイツ神秘主義のみならず、アウグスティヌスや盛期スコラ神秘主義など多様な伝統を受け継ぎ、独自の神秘主義を展開して後世へ巨大な影響を与えたことを明らかにする画期的業績。
キリスト教思想の土台をなす信仰は、世界に向かっては教義の形成と世界観を生み出し、内に向かってはキリストおよび神との交わりを求める霊性として現れる。エックハルトは、精神の最も内奥にある「根底」(Grund)に、神秘経験の場をみたが、著者はこの「根底」概念を辿ることにより、タウラーからルターを経てベーメやシェリングに、さらにはルターからドイツ敬虔主義を経てシュライアーマッハーに至るドイツ神秘主義の流れを解明し、転換期に立つルターのヨーロッパ精神史上の意義を闡明にする。ルターはドイツ神秘主義のみならず、アウグスティヌスや中世神秘主義などの多様な伝統を批判的に継承し、独自の神秘主義を展開して、後世へ巨大な影響を与えた。本書は中世から近代に至る理性の自律化運動の中で、神秘主義が地下水脈のように滔々と流れつづけたことを、多くの原典に即して明らかにした画期的業績である。理性の道具化にともなう技術文明と産業社会の急速な展開によって、精神的にも物理的にも地球規模の困難に直面する現在、近代ヨーロッパの霊性の源流を見極めることはわれわれに汲めども尽きぬ示唆を与えるであろう。
【目次より】
凡例
序論 近代ヨーロッパ的霊性の源流
第一章 ルターと中世神秘主義の伝統
第二章 ルターとノミナリズムの神秘主義
第三章 シュタウピッツとルターの神秘思想
第四章 「根底」(Grund)学説の受容過程
第五章 初期の聖書講解における「霊」(spiritus)概念
第六章 『ローマ書講義』における神秘思想
第七章 ルターの神観における神秘的なるもの
第八章 キリスト神秘主義
第九章 神秘経験の現象学的考察
第一〇章 ルターと霊性主義者たち
第一一章 ヴァイゲルとアルント ルター派の神秘主義I
第一二章 シュペーナーからシュライアーマッハーヘ ルター派の神秘主義II
第一三章 ヤコブ・ベーメとシェリング ルター派の神秘主義III
あとがき
初出一覧
資料と参考文献
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