ヘーゲル現象学の理念

「私の著書がついに出来上がりました。しかし私の友人たちに本を贈る際にも,出版者と印刷に関わるすべての過程を支配し、しかも部分的に構成そのものを支配した同じ不幸な混乱が生じました。……本来は導入部であるこの第一部の理念に対してあなたが何を言うか、私は知りたいと思っています」(ヘーゲル)。本書はこの現象学の理念への問いに答える試みであり、三つの基本性格(体系の第一部、導入部、歴史)に定位して現象学を「三枚重ねの透かし織り」として読み解くことである。「構成そのものを支配した不幸な混乱」は精神と宗教の章の書き加えによって生じた。この混乱を取り除くことによって本書が浮き立たせた「織物=テクスト」の美しい模様こそ、ヘーゲル現象学の理念である。

【目次より】
略語一覧
序章 現象学の理念

第一章 体系の第一部としての現象学
第一節 原現象学と現象学体系
第二節 意識の経験の学
第三節 絶対知の体系と体系の現象学的危機

第二章 導入部としての現象学
第四節 論理学への導入部
第五節 無限性としての承認
第六節 理性による不幸な意識の克服と国家

第三章 歴史としての現象学
第七節 哲学史に対応する―つの歴史
第八節 感性的確信 知覚 悟性
第九節 自己意識とアリストテレス

終章 ヘーゲル哲学の地平

あとがき

ヘーゲル現象学の理念

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