存在と秩序 人間を巡るヘブライとギリシアからの問い

人間にとって存在と秩序はいかなる意味を持つのか、ひいては人間は存在と秩序についていかに思考してきたのか。このような問いが土台にある本書は、古代ギリシアとヘブライの思想が交叉し発展したヨーロッパ精神史の原点を再考する。本書はまず、ニュッサのグレゴリオスに目を向けることから始め、エウリーピデースやヘロドトス、トゥキュディデースらのテクストからアテーナイ民主政における説得と情念の意義を考える。次に、プラトンの後期対話篇から、人間の生と共同性の存続を探究した彼の晩年の思考を明らかにする。その上で、プロティノス中期の精華である『エネアデス』IV3-4〔27-28〕『魂の諸問題について』に焦点を絞り、コスモス(宇宙、世界)やテクネー(技術)と人間の関わりを巡る彼の思索を、中間性という概念を手がかりに丹念にたどる。さらに、『創世記』の族長物語とヨセフ物語における兄弟の逆説がもたらした情念の相克とその浄化を巡る考察を経て、神と人間それぞれにとっての情念と秩序という視座から『ヨブ記』を読み解く。最後に、ロゴスとパトスが交叉する『オデュッセイア』から、人間の秩序についての思想の展開を読み取る。従来、十分に論じられてこなかった、古代ギリシアとイスラエルの思惟が各々のあり方で、しかし共に問い接近しようとした地平の根幹に挑む。

【目次より】
はじめに
第一章 生き続けること 民主主義の原義と本質
第一節 アテーナイの民主政
第二節 説得と情念
第二章 プラトンにおける人間の生と共同性 後期対話篇を素材に
第一節 『ソピステス』
第二節 『政治家』
第三節 『法律』
第三章 プロティノスについての存在論的考察(一) 『エネアデス』IV三─四〔二七─二八〕
第一節 宇宙の魂による制作 IV四、一〇─一三を中心に
第二節 技術(テクネー)を巡る思惟の位相
第四章 プロティノスについての存在論的考察(二) 『エネアデス』IV三─四〔二七─二八〕 
第一節 再論 存在への問いをプロティノスに見いだす意味
第二節 われわれの魂と中間的存在者たるわれわれ人間
第三節 中間的存在者としての人間と記憶
第四節 生成するものの存続と、中間的なるものの意義
第五章 情念とその浄化 『創世記』を巡る一考察
第六章 情念と秩序 『ヨブ記』
第一節 序曲と第一回討論
第二節 第二回討論
第三節 第三回討論
第四節 二八章から三一章まで(知恵の所在を問う歌およびヨブの独白)
第五節 神の弁論から終曲まで
第七章 言葉の行方 『オデュッセイア』第四巻を中心にして
『オデュッセイア』第四巻における話者とその視線
おわりに

存在と秩序 人間を巡るヘブライとギリシアからの問い

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