ケンブリッジ・プラトン主義 神学と政治の連関

政治的・宗教的内乱期にあった17世紀イングランド、ローマとジュネーヴの狭間で、霊権と俗権、信仰と社会性、宗教と科学との間の中庸を探り、君主制と国教会を近代社会に適応させていく、大陸とは異なる独自の近代の姿を示した思想家たちがいた。本書はそうしたケンブリッジ・プラトン主義者――ベンジャミン・ウィチカット、ヘンリー・モア、ラルフ・カドワース、ジョン・スミス――の思想世界とその政治的含意を、神学と政治の連関という視座から、内在的に理解し再構成する政治思想史研究。ケンブリッジ・プラトニストを非活動的な観想主義者とする古典的イメージを排して、各思想家の思想的・政治的プロフィールを概観、中心的テーゼと議論の枠組を示した上で、彼らの枢要概念である「神的理性」と「参与」、「自由意志」、「神愛」、「自然法」という神学的・哲学的主題を順次分析する。次いで、それら理論的考察において示唆された社会的・政治的実践性を踏まえ、彼らの「教会理念」、「黙示録解釈」、「政治世界像」について検討。全体を通じ、理論から実践にいたる架橋が図られていく思惟を再構成し、ケンブリッジ・プラトン主義において神学がいかに来世を導く道徳的準備としての現世統治を要求するのかを解明する。従来の政治思想史研究におけるケンブリッジ・プラトニズムの決定的不在を突き、今ここにある近代の再考を促す。わが国のイギリス政治思想史研究に着実な一歩をもたらす画期作。

【目次より】
凡例
序論 本研究の背景
第一部 神学から道徳ヘ
第一章 思想的来歴 理論と実践におけるヴィア・メディア(中道)
第二章 神的理性と「神への参与」 哲学的神学の基礎
第三章 自由意志と倫理 神への自由と完成
第四章 神愛の概念 善・参与・愛の法
第二部 道徳から国家・教会へ
第五章 神学的主知主義の自然法道徳
第六章 包容教会理念
第七章 黙示録解釈と千年王国論 アングリカン国制の擁護と革新
第八章 政治世界像 善・参与・主知的システム
結論
あとがき

参考文献

ケンブリッジ・プラトン主義 神学と政治の連関

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