中国文学と日本 十二講(中国学芸叢書)

遥か古代、漢字に接し、初めて文字を知った、われわれの祖先――。日本人と中国の古典との深い因縁を、漢詩の確かな鑑賞眼をもって考察し、日本における知識人と漢字文化の系譜を、飛鳥・奈良時代に始まり江戸の漢籍出版に至るまで、生き生きと描き出す。『古事記』や『日本書紀』にみる初期の漢文、『万葉集』に記された山上憶良の漢詩文、『懐風藻』の大半を占めた藤原不比等一門の権力と漢詩、平安時代の『句題和歌』や『新撰万葉集』における漢詩と和歌の関係、室町時代に武家階層の信仰を得た禅宗五山寺院による漢籍の出版と学僧の講義録、そして江戸時代における唐詩の営業出版と読書の大衆化へと、時代を追って中国古典文学の摂取とわが国独自の発展の歴史を明快に辿る。本という形態が岐路に立つ現代に、書物文化の育んだ豊かな実りをも伝える好著。

【目次より】抜粋
第一講 漢字との出逢い
「倭」の人々と文字 古代の文字資料 中国の文献にみえる記載 大陸との交流 『懐風藻』と『日本書紀』 『古事記』と『万葉集』
第二講 万葉歌人の漢詩I
山上憶良の漢詩文 大伴旅人と憶良 大伴家持と池主の漢詩文 など
第三講 万葉歌人の漢詩II
『万葉集』と『懐風藻』 長屋王の詩 藤原不比等とその一門の人々 藤原宇合の詩
第四講 漢詩と和歌
「詩」と「うた」 嵯峨天皇の勅撰三集 『新撰万葉集』 大江千里の『句題和歌』
第五講 漢籍の伝来と普及
「倭」から「日本」へ 遣唐使と書籍 『日本国見在書目録』 五山の僧侶と漢籍 五山寺院の書籍出版
第六講 五山学僧の漢詩講義I
律令制下の講学 五山寺院における講義  「江南春」詩の抄 「帰雁」詩の抄 「湘妃廟」詩の抄 「湘妃廟」詩余話
第七講 五山学僧の漢詩講義II
『古文真宝』の抄(『笑雲和尚抄』) 『古文真宝前集抄』 読書階層の拡大
第八講 江戸時代における漢詩の翻訳・翻案
営業出版のはじまり 森川許六の『和訓三体詩』 『和訓三体詩』の俳文 『六朝詩選俗訓』と『訳注聯珠詩格』
第九講 江戸時代の漢籍出版I 本屋仲間と板株
写本と刊本 本屋仲間と板株 「類版」をめぐる訴訟 嵩山房と『唐詩選』  『唐詩選』の重版事件
第十講 江戸時代の漢籍出版II 江戸嵩山房対京文林軒
『唐詩選』が「売買停止」に 幻の『唐詩訓解素本』 『唐詩国字弁』をめぐる「出入」
第十一講 『唐詩選』の和語解・画本など
嵩山房『唐詩選』の各種 『唐詩選』和語解の各種 四代目小林新兵衛という人
第十二講 文人と書商
古文辞派批判の新風 江湖派の文人と書商たち 書商たちの積極的関与 万笈堂英平吉と館柳湾 鵬外『伊沢蘭軒』にみえる書商
あとがき

中国文学と日本 十二講(中国学芸叢書)

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