ジョゼフ・ド・メーストルの思想世界 革命・戦争・主権に対するメタポリティークの実践の軌跡

「人間が革命を導いたのではない。革命が人間を操ったのだ」。フランス革命期の反革命思想家として知られるジョゼフ・ド・メーストルの思想の根幹にあるのは、人間は主体的に行動するのではなく、神の道具としてみずからの意志とは異なる方向へと導かれていくという、一見してきわめて非政治的な秩序観である。本書は、この秩序観の背景にあるキリスト教神学の伝統的議論、とりわけ〈神義論〉と〈摂理〉をめぐる諸問題が、メーストルにどのように受容され、〈メタポリティーク〉という彼の理論枠組みにおいてどのように政治と関連づけられたかを、ライプニッツ以来の先行理論や同時代のヴォルテール、ルソー、コンスタン、トクヴィルらとの比較を通して解明。革命や戦争に荒れる時代の中で、故郷を追われたメーストルが摂理概念を用いてそうした政治状況をいかに論じたかを辿る。そのうえで、ルソーの人民主権論への批判として展開されたメーストルの主権論すなわち君主政擁護論の特徴を明らかにするとともに、その後のナポレオン統治および王政復古という歴史的状況に伴い、メーストルが最終的には摂理主義から離れ、教皇の不可謬性を要請する教皇主義へと変遷してゆく姿を仔細に追究し、その思想の揺らぎを克明に描く。わが国において先行研究の乏しいメーストルの著作と行動の意味を読み解き、その思想の全体像を示した、政治思想史研究の優れた業績。

【目次より】
凡例
序論
第一節 問題の所在
第二節 前史 『考察』の成立まで
第I部 革命と戦争に対するメタポリティーク
第一章 摂理概念
第一節 神義論と政治 最善説とその批判
第二節 メーストルにおける神義論と政治
付論 摂理をめぐるメーストルとトクヴィル
第二章 反革命論
第一節 総裁政府期における共和政擁護論
第二節 反革命と摂理
第三章 戦争と犠牲 啓蒙的戦争観への批判として
第一節 啓蒙の戦争観への批判
第二節 戦争論における政治と宗教
第II部 主権論の展開
第四章 主権と君主政
第一節 伝統的主権論の枠組
第二節 メーストルの主権論
第五章 「正統な纂奪」
第一節 『政治的国制論』の背景と主張
第二節 バークとメーストルの国制論
第六章 摂理から教皇ヘ 『教皇論』における抵抗と叛乱
第一節 革命期の主権論
第二節 摂理から教皇へ
結論
あとがき

参考文献

ジョゼフ・ド・メーストルの思想世界 革命・戦争・主権に対するメタポリティークの実践の軌跡

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