井伊直弼 修養としての茶の湯

近世の為政者階級である武家として文武にわたる〈なすべき業〉の修養に勤める直弼は、同時に徳川家のために先陣を駆って死に向かう戦う武士を夢みていた。本書はこれまで誰もなし得なかった、政治家井伊直弼と文人井伊直弼の統合を修養としての茶の湯の視点から試みて、政治と茶の湯との関わりを魅力的な叙述で見事に描いてみせる。1851年から1860年までの44会の茶会記録から、理念と歴史的現実が鋭く相克するシーンを丹念に解読し、文人の内面世界と政治家の思想と行動を考察するアプローチは独創的である。その上で、これまで未紹介の原資料に注目するとともに、晩年の著述『茶湯一会集』を武家のための〈総合的茶の湯作法集〉と評価し直すことにより、転換期を生きた井伊直弼を茶道史においても新たに位置づけ直す。第12回茶道文化学術奨励賞(財団法人:三徳庵)受賞。

【目次より】

はじめに
第一章 理想の武士と「なすべき業」
第一節 若き日の苦悩と弘道館
第二節 なすべき業 武道と文芸
第二章 埋木舎時代の茶の湯 なすべき業としての茶の湯
第一節 石州流と井伊家の茶の湯
第二節 埋木舎時代の茶の湯
第三章 世子時代の茶の湯 「行」としての茶の湯
第一節 世子時代の茶の湯著述
第二節 茶の湯における食事と表記の歴史
第三節 石州流と「懐石」表記
第四章 藩主時代の茶の湯 武家の茶の湯の完成
第一節 『茶湯一会集」の評価
第二節 『茶湯一会集』
第三節 「一期一会」と「独座観念」
第五章 直弼の茶会 大名茶会と草庵茶の湯
第一節 直弼の茶会記録
第二節 大名/数寄屋坊主の会
第三節 ”草庵茶の湯“の実践
第四節 直弼の茶会 総括 大名茶会と草庵茶の湯
結語

あとがき
井伊直弼(茶の湯)関連年譜
文献目録
索引
英文概要
英文目次

井伊直弼 修養としての茶の湯

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