立憲非立憲
「憲法学の京都学派」と呼ばれ、美濃部達吉と双璧の存在と目された憲法学の大家が残した偉大なメッセージ。たとえ「合憲」であっても「非立憲」であってはならない。違憲ではないか、という疑念の声が多くあげられた法案が可決され、改憲への動きが現実味を帯びる現在、「合憲か、違憲か」の対だけでは本質をつかむことはできない。本書で提示される「立憲か、非立憲か」という対こそが、日本の未来を左右する最重要の争点になる!
本書の著者である佐々木惣一(1878-1965年)は、京都帝国大学で法学を学び、母校で教授を務めた憲法学・行政学の大家として知られている。
厳密な条文解釈に基づいて独自の学説を展開した佐々木は、弟子の大石義雄(1903-91年)とともに「憲法学の京都学派」と呼ばれ、東京帝大教授を務める美濃部達吉(1873-1948年)に伍す存在として「東の美濃部、西の佐々木」と称された。1933年に滝川事件が起きると、これに抗議して京都帝大を退職したように、常に「学問の自由」を重んじた人でもある。
戦後には、貴族院議員を務めるとともに、近衛文麿(1891-1945年)から依頼されて憲法改正調査にあたり、憲法草案を作成したことでも知られる。この草案は採用されずに終わったが、学問に対する姿勢を変えることのなかった佐々木は、『日本国憲法論』(1949年)、『憲法大義』(1950年)などを物した。
本書は、その佐々木惣一が「大正デモクラシー」華やかなりし1918(大正7)年に出版した著作である。ここで打ち出されている主張は、表題作「立憲非立憲」を見れば一目瞭然と言える。「政治は固より憲法に違反してはならぬ。而も憲法に違反しないのみを以て直に立憲だとは云えない。違憲では無いけれども而も非立憲だとすべき場合がある。立憲的政治家たらんとする者は、実に此の点を注意せねばならぬ」。違憲ではないか、という疑念の声が多くあげられた法案が可決され、改憲への動きが現実味を帯びる現在、「合憲か、違憲か」の対だけでは本質をつかむことはできない。本書で提示される「立憲か、非立憲か」という対こそが、日本の未来を左右する最重要の争点である。
今こそ重要性を増している本書を異彩を放つ憲法学者・石川健治氏による渾身の書き下ろし「解説」とともに送る、待望の文庫化!
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