マーケティングに使える「家計調査」 世界最大の消費者ビッグデータは「宝の山」だ
メディアでもよく取り上げられる「家計調査」。総務省が行っている、日本独自かつ世界最大の統計には、ビジネスに、地域振興に役に立つヒントが満載! 「ぎょうざ消費日本一」は宇都宮か浜松か。「納豆消費日本一」は水戸か福島か。眼鏡とコンタクト、価格戦略が成功しているのは? バーゲンセールの効果とは? 奈良、東京、秋田、効果的な教育モデルはどこか? 人気エコノミストによる新しいビジネスの教科書。
【著者コメント】著者は、本書で取り上げた『家計調査』が大好きで、これまでも、自分の本のなかでくり返し取り上げてきました。
他の先進国でも似た調査が行われていますが、消費者物価指数計算の基礎資料を得るためのもので、日本の『家計調査』は詳しさが図抜けています。最近はモノがなかなか売れないなかで、企業がマーケティングに使うために、いろいろとデータの活用が試みられていますが、民間のデータに目を向けなくても、日本政府が公費を使って実施している調査のなかに十分使えるものがあり、『家計調査』はそのひとつです。
実際に、地域振興にうまく活用したのが宇都宮市で、餃子の消費量が1位であることを売り物にして、餃子の街として印象づけました。その後、浜松市と宇都宮市の餃子消費量1位争いは、速報がニュースとして報じられるまでになりました。しかし、このデータが示しているのはテイクアウトの餃子の消費量であって、お店で食べる餃子が美味しいかどうかを示してはいません。だから、宇都宮市は「うまく活用した」と言えるのです。そして、餃子のバトルでこんなに盛り上がるのなら、納豆の方がバトルは熾烈だと言えます。2014年の納豆消費量の1位は、「水戸納豆」で知られる水戸市でなく、福島市でした。福島市は果物のももの消費量でも1位で、震災と原発事故でダメージを受けた福島の地域振興のためにこれらのデータは役立つはずです。
著者は、本書の原稿を書き上げたあとに脳出血で倒れ、最初は大阪の病院に入院していましたが、パンにバターでなく、マーガリンを塗るのは、大阪を中心とした関西圏の特徴です。ですから、病院の朝のパン食にマーガリンがついてきたときに、データ通りだと感じました。
また、生産地として有名であるよりも、消費が盛んである方が、美味しい食べ方を知っていそうで、地元の人が本当にその食材を好きでいることがよくわかって、消費者としては安心できる感じがしませんか? 例えば、東北より北でブランド牛を育てている地域で、実際に牛肉の消費量が多い都道府県庁所在市は、山形市で、だから、山形県の米沢牛(山形牛)は美味しそうな感じがします。
本書を通じて、マーケティングにも街興しにも使える消費者行動についてのビッグデーターー『家計調査』の面白さと有益さが、少しでも多くの人に伝わればと願っています。
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