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崩れ

緑豊かな自然のなかで山が崩れ、河が荒れる。崩れ
その風景はなんと切なく胸に迫るものか。生あるものの哀しみを見つめる最後の長篇

この崩れこの荒れは、いつかわが山河になっている。わが、というのは私のという心でもあり、いつのまにかわが棲む国土といった思いにもつながってきている。こんなことは今迄にないことだ。私は自分がどんなに小さく生き、狭く暮してきたか、そしてその小さく狭い故に、どうかこうか、いま老境にたどりつけたと、よくよく承知している。──本文より