芥川賞受賞作『アサッテの人』の地平を凌駕する遠大な長編
グロテスクなまでに美しい「生」の極致!
「世界の果てをこの眼で見る」と言い残してイタリアへと旅立った若き詩人・月原篤(つくはらあつし)。詩誌の編輯者・井崎修一は、読者に奇妙な後味を与える詩と、野鄙(やひ)で粗暴ながらも吸い込まれるように美しい容姿を持つ篤に惚れ込み、消息を絶つまで書き綴られた詩稿と書簡から、その異様な思索の軌跡を描き出そうと試みる――。
諏訪哲史の文学が、日本語の文学界でどのように持続し変化していくのか、とても興味がわくのだ。私たちの文学界とは、彼のような本質的体質的モチーフを持続しようとすれば窒息してしまう世界であるかもしれない。しかし希薄な空気を吸いながら、その乏しさから異様に強度な表現を生み出した世界の文学者たちが、彼の味方である。――(宇野邦一「解説」より)
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