微妙に心地よい脳をくすぐる32編 傑作ショートショート集!郁子が頼まれたアルバイトの内容は、別人になりすまして横浜元町へ行きワンピースを一着買い求め、さらに店で小物入れを忘れて帰ることだった……(「奇妙なアルバイト」より)。せわしないけどありきたりの日常を、いつしか得体のしれない影が蝕んでいく。
微妙に心地よい脳をくすぐる32編 傑作ショートショート集 第5弾
郁子が頼まれたアルバイトの内容は、別人になりすまして横浜元町へ行きワンピースを一着買い求め、さらに店で小物入れを忘れて帰ることだった……(「奇妙なアルバイト」より)。せわしないけどありきたりの日常を、いつしか得体のしれない影が蝕んでいく。
「早いのね」と夫に尋ねた。「うん。たまにはな。どこへ行ってたんだ、おしゃれをして」と、夫が笑いかける。たしかに今日のおしゃれは普段のレベルを越えている。
――嘘は厭――
夏子はとっさにこう思った。思ったというより身についた癖だった。「四谷までちょっと」四谷へ行ったことは確かである。「ほう? 同窓会?」
(「嘘をつかない女」より)
※本書は1996年1月に刊行された講談社文庫を一部改訂した新装版です。
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