真っ白な皿の上に、トマトの鮮やかな赤、アスパラのグリーン……。ソースの1滴1滴が心に染み込む。泣きたくなるくらい懐かしくていとおしい味だった。 ……モデルのような外見の証券アナリスト吉野貴弘は、探し求めていた味にようやく巡りあった。「いったい、どんな人間がつくったんだろう」 厨房から出てきた長身の青年を見て、思わず吉野は息を呑(の)んだ。美形、だったのだ。