生身の人間へ振りおろした、ただ一度の軍刀が招いた悲劇……
沖縄戦のさなか米兵3名が命令一下、密かに処刑された「石垣島事件」。執行者の1人ゆえに戦後の昭和25年4月7日に「戦死」しなければならなかった学徒兵の真実を日米の新資料を駆使して突きとめた話題のノンフィクション作品。
石垣島事件に即していえば、捕虜に手を下した日本軍部隊と、戦後それを槍玉にあげたアメリカ軍の双方それぞれに“大義”があったのです。大義と大義のぶつかり合いが人間を人間でなくしていく、そしてその時に先頭に立たされるのは常に真面目な若者であるという歴史的事実が、私を何ともいたたまれない感情におとしいれます。――「あとがき」より
……学友名簿に「昭和25年4月7日戦死」と記(しる)された学徒兵の名は、「田口泰正(やすまさ)」、北海道小樽の出身である。いったい、彼はなぜ、昭和25年4月の戦死なのだろうか。学友名簿に記された22文字の中には果たしてどのような真実が秘められているのであろうか。そしてまた、学友たちは戦後の平和時に死んだ友を、なぜ「戦死」と書き込まなければならなかったのか……。
歴史の闇と不条理を埋葬した分厚い“学友名簿”のページを1枚1枚めくる私の長い旅が始まった。
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