昭和初期の世界へ旅立ち、そこに住まう人々と愚直に向きあう赤裸な記録
世界の激動を予感させる昭和初期、3年、11年と2度の欧米旅行に発ち、10年には樺太、中国等を訪れた正宗白鳥。文豪の眼に世界はどう映ったのか……。名エッセイ「六十の手習い」「髑髏と酒場」「郷愁――伯林の宿」を含む21篇を精選。新興国アメリカとヨーロッパの比較、イタリア、フランスの芸術、スターリンのソ連、ヒトラーのドイツ、外地で出会う不思議な邦人のことなど、簡潔な文体で直截に印象を記す好随筆集。
大嶋仁
彼の外国旅行記には、他の作家たちの同類のものとはまったくちがった味がある。あれほど長期にわたって多くの国々を見て回ったのに、異国情緒がまったくないというのもその一つだし、物珍しい風物に驚いているようでいて、結局は人間の本性はどこでも変わらないと見抜く眼力が光っているのも白鳥ならではの特徴である。――<「解説」より>
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