何を急ぐ旅でもないのにせかせかと鞄をまとめたのは、空模様の悪い11月半ばであった。(本文より) 日本の各地を訪れ、折々の旅情を綴った表題作「月の十日」、“のっへら棒の東京に何かしら飢えに似たものを感じた”と書き、敗戦後の風俗を鮮やかにとらえた「東京雑記」、ほかに「燈下言」、「随筆四題」を収録。名文家で知られた孤高の詩人・三好達治の珠玉のエッセイ群。