河東碧梧桐に俳句を学び、句作で鍛えた簡潔強靱な文体は、「手織木綿の如き」文章と芥川龍之介に評された。自己の身辺を凝視し、自然風景を鮮やかに描いた作品は、写生文の真骨頂とうたわれた。少年期の体験を記す「父」、結婚に至るまでの心情を活写する「結婚まで」のほか、「積雪」「大火の夜」「伐り禿山」「松島秋色」「野趣」の7篇。瀧井孝作傑作短篇集。