小樽高等商業学校に入学した「私」は野望と怖れ、性の問題等に苦悩しつつ青春を過ごす。昭和3年待望の上京、北川冬彦、梶井基二郎ら「青空」同人達との交遊、そして父の危篤……。純粋で強い自我の成長過程を小林多喜二、萩原朔太郎ら多くの詩人・作家の実名と共に客観的に描く。詩集『雪明りの路』『冬夜』誕生の時期を、著者50歳円熟の筆で捉えた伊藤文学の方向・方法を原初的に明かす自伝的長篇小説。