〈満州〉国建設に青春を賭けた主人公青木隆造。敗戦後、福祉事業団兼愛園の園長となり混血児の世話をしている。その業績が表彰された時、彼は崩壊した。仮面に封じ込めた自己の内部に蟠る「見極めがたい曠野のイメージ」と「喪った時間の痛み」とが「隠微な軋み音」を響かせ解かれてゆく。1960年代を代表する作家高橋和巳晩年の傑作。