水のなかに浸って死んでいる子供の眼はガラス玉のようにパッと水のなかで見ひらいていた。……まるでそこへ捨てられた死の標本のように子供は河淵に横わっていた。(「鎮魂歌」)──1945年8月6日の〈死の風景〉に立ち合わされ、死者の嘆きを抱え込んでしまった作家の苦悩を刻む「氷花」「飢え」「災厄の日」「火の子供」ほか童話6篇を含む原民喜戦後全小説下、21篇。