人類は戦争と戦争の谷間にみじめな生を営むのであろうか。原子爆弾の殺人光線もそれが直接彼の皮膚を灼かなければ、その意味が感覚出来ないのであろうか──(「戦争について」)8月6日の惨劇を時間を追い克明に描いた傑作「夏の花」3部作をなす「壊滅の序曲」「廃墟から」「美しき死の岸に」等凄絶な地獄絵〈ヒロシマ〉を引き受けた著者の冷徹な声を、戦後50年を経て今問う原民喜戦後全小説上、17篇。