6歳で実母と生き別れ、16歳で女子大に仮入学する旅立ちまでの精神の遍歴をたどった自伝的長篇。終生志賀直哉を文学の師と仰ぎ精進した女流作家が、3代にわたる一族と、自己の人間形成を冷静に見据える。他に短篇「教母」「イワーノワさん」等6作を収録し、網野菊の感銘深い文学世界の精髄を凝縮する。