若き中上健次が、根の国・熊野の、闇と光、夢と現、死と生、聖と賤のはざまで漂泊する、若き囚われの魂の行脚を、多層な鮮烈なイメージに捉えようとして懸命に疾走する。“物語”回復という大きなテーマに敢えて挑戦する力業。短篇連作『熊野集』、秀作『枯木灘』に繋ぐ、清新な15の力篇。