幽玄・優艶・有心など、日本的美意識の多くは、変転つねなき動乱のさなかに和歌・能・笛・琴などの「道」に精進を重ねた中世人によって生み出された。風流の極地に我が身を解放することにより、有限の生のなかで永遠を求めんとした「道」の理念を説き、宗祗の連歌と世阿弥の能を楕円の両焦点とした中世文藝の深遠豊饒な世界を明確に論述する。全5巻の大著「日本文藝史」に先行して執筆された珠玉作。