一、およそ一事をなし一物に接するにも必ず満身の精神を以てすべし。瑣事(さじ)たりともこれを苟且(かりそめ)にすべからず。 一、およそ子弟は幼少の時において世間の艱苦を知らしめ、独立自活の気象を発達せしむべし。――渋沢家家訓よりの抜萃である。他に“いやしくも己の諂(へつら)う者を友とすべからず”また“人間はいかに円くともどこかに角がなければならぬ”など、人が生きる具体的指針にみちており、叡知の書としての名を高からしめている。