遺伝子組み換えメロン、クローン牛、遺伝子治療……作物、食品、医療などさまざまな分野に応用され、日々進展するバイオの世界。生命現象の担い手としてのDNA、RNA、タンパク質の精緻なはたらきを軸にバイオのメカニズムを平易に解説し、その可能性と問題点を考える。
「生きている」ことの源――いまから100年ぐらい前までは、生物は、無生物とちがって魂をもつ特別な存在だと考えられていた。つまり、「生きている」ことは、物質だけではとうてい説明できない。いいかえると、物理学や科学の法則と知識では説明できない存在であると考えられていた。しかし、この100年あまり、とくに20世紀の後半には、生命の理解は急速に進んだ。いまでは、生物の働きや性質は、核酸(DNA RNA)とよばれる巨大な分子と、タンパク質というこれまた巨大な分子の働きと性質によって、その大筋は理解できるようになった。地球上のあらゆる生物は、すべて核酸とタンパク質をもっている。このことは、地球の上のすべての生物が、お互いに親類であり、共通の祖先をもっていることを示している。――本書より
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