政・官・軍のリーダーとして大英帝国を支えつつ、宏壮な邸宅では社交、狩猟、スポーツに熱中――空前の豊かな生活を送った活力あるエリートたちを描く。
広大な領地――「お宅の敷地はどのくらいあるのですか」と尋ねられた貴族は、「わが国境はあの山の向こうのそのまた向こうの……」と答えた、こういう話を聞いたことがある。実際、貴族の所有している土地は広大な面積にのぼるものであった。たとえば今を去ること120年前の1870年代、つまり、かの大英帝国真っ盛りの時期に、なんと700年ぶりに土地所有の調査がおこなわれた。そしてこのとき明らかになったことは、イギリスがいかに大土地所有制の国かという点である。まずイングランドとウェールズにおいて、400人の貴族が全所有地の17%にあたる572万8979エーカーを所有していた。1エーカーは約1200坪だから、大変な広さの所有地である。……そしてこれらの所領が時代とともにふえたり、あるいは減ったりして今日にいたるわけだが、それにつけても思うのは、わが日本国と比べてなんとスケールの大きなことよという点である。なにしろチャールス皇太子が地主となっている土地の広大さは、東京23区の面積に相当するというのだから、いくら身分が違うとはいえ、呆然としてつばも出なくなる。――本書より
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