ウィーンミラノにパリ、ニューヨーク。世界中のオペラ劇場を股にかけ、魅惑のアリアにブラボーする。四夜続けて、「ニーベルンクの指環」。スペクタルなら「アイーダ」。作品、歴史から歌手、劇場まで、“いけない楽しみ”オペラの全て、こっそり、あなたに教えます。
オペラは危険だ――江戸のころには芝居見物して切腹させられた武士がいたというが、いまオペラを聴いて命にかかわることはない。誰からも責められない。それどころか、まだ成人にも達していない女の子がオペラを好んだとしても、世間は大目に見ている。これは多分、オペラがいけない楽しみであると、まだ知られていないからではないか。少なくとも、私の両親には知られていなかった。「今度外国からオペラが来るんだけど……」と頼めば、ちゃんと小遣いを引き出せた……「マリファナを手に入れるので援助を……」というわけにはいかなかった。どちらが危ないかは、いまならはっきり言える。オペラだ。――本書より
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