仮面としての化粧・衣装。詐術としての「よい子のふり」。情動表現としての身振り・手振り。他者の視線を受け、自己の表層に浮かび上がる「ふり」の本性を探り、自己の統合を図る。
内部と外部――「ふり」は内部の外部化である。内部の生命的エネルギーは外部の動きとして現れることによって、それ自体を解放する。内部は外部に解放されながら、他者にひとつの意味を提供し、他者との関係のなかに自己を生みだす。「ふり」によって、自己は無意味と孤絶との暗やみから脱れ出て、他者の「ふり」と共鳴しつつ他者と世界を共有するのである。表情、身振り、しぐさ、言葉づかい、こうした「ふり」は、内部と外部との通路であり、自己を他者へとむけると同時に、他者を自己へとむけるものである。もし内部が内部としてのみとどまるなら、私は一個の木石にとどまるしかないであろう。私は私にとって即自的な意味しかなさず、他者にとっては無意味な、あるいは不気味な一物体でしかないであろう。――本書より
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