名探偵ホームズはどこに生まれ今どこにいるのか。コカインを愛し、独身主義を通し、独特の犯罪美学を持つ偏屈探偵。絶頂期ロンドンに舞台を得たホームズの素顔を解読。 ウイスキーのソーダ割り――ホームズは「孤独な自転車乗り」事件(1895年4月)のさい、自分の代わりに事件現場に派遣したワトソンが気の利いた情報を集めてこられなかったと、不満をあからさまにロにしたので、さすがのワトソンもむっとして「それでは僕は一体どうしたらよかったと君は言うつもりなんだ」と突っかかったところ、ホームズは「君は現場から最も近くにあるパブに行くべきだったんだよ。パブというのはその近在のゴシップの集まる巣みたいなものさ。そこではパブの主人から皿洗いの女中にいたるまで、どこの誰のことでも、何のことでも教えてくれるものさ」といった――本書より