「さすらう」「いさよう」「たゆとう」……“移動”を表すにも言い分けが必要だ。45の基本動詞から、さかのぼり、派生する、多彩な類語の使い分け。〈動詞〉という鉱脈に、魅力ある日本語を掘り起こす! 知る――対象の全き統括――もともと「知る」は「領る(しる)」で、それをすみずみまで思いのままに支配するという意味だった……そこから、世話をし面倒を見ることにも「領る」が使われ、細かく面倒を見ることは、対象や相手を認識し、じゅうぶんに理解することになるから、今日の「知る」意味も生まれてくる。とにかく存分にほしいままにできる状態が「しる」ことなのだから、逆に、何物かに自分の心が占領され支配されて心の働きが奪われてしまえば、魂が抜けたようになり、馬鹿同然の精神状態に陥ってしまうだろう。「痴れ者」などという「痴れる」がこれで、「しる」の受身形だ。――本書より