州境をこえれはそこは別世界。エリートの生産地マサチューセッツ、大男と大女と大ボラ話のテキサス、全米の憧れの地カリフォルニア――など、風土も文化も法も異なる「州」から、アメリカ人の多様な生活と魂を浮き彫りにする。
オレンジの皮をむくことに関する法律――アメリカをめぐるさまざまなイメージはすべて正しい。それぞれに真実をついているからである。その意味ではアメリカは、それを見た者の数だけこの世に存在することになる。しかしこのことを逆から言えば、アメリカは定義をこばんでいる。あまりにも広い国土と内にかかえる多様性は、一枚岩的なイメージの形成を困難にしている。事実、不思議なところのある国である。ハイテク産業が軒をつらねるシリコンバレーがある一方、21世紀が近づいた今日でも聖書の天地創造の物語がそのまま信じられている地域や、禁酒法が生きているところもある。「ホテルの滞在客は自室でオレンジの皮をむいてはならない」(カリフォルニア州)とか、「公衆の面前で衣類を脱いではならない」(二ユージャージー州)などという法律も現実に各州に存在する。――本書より
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