楽しい政治 「つくられた歴史」と「つくる現場」から現代を知る
「楽しい政治」というタイトルを見て不真面目だとか不謹慎だと感じたなら、そういう人にこそ本書を手にしてもらいたいと思います。そうすれば「今」という時は「過去」の上に成り立っていること、その成り立ちには無数の人の無数の意図が混入していること、そしてそれを知ることは何より「楽しい」ものであることが分かってもらえるでしょう。
本書は二部構成になっています。第I部では「今」がいかにして「過去」の上にあるのか、そのプロセスの多様さを映像作品を素材に明らかにしていきます。取り上げられるのは『ウォッチメン』、『コンクリート・カウボーイ』、『トイ・ストーリー』、『ノマドランド』等々。多くの人が見てきたこれらの作品からどんな「過去」と「今」が浮かび上がってくるでしょう? そして、第II部では、世界で起きている「今」の出来事を取り上げ、一つ一つの出来事の中にこそ「政治」があることが示されます。取り上げられるのは「Qアノン」をはじめとする陰謀論、旧約聖書の記述を歴史的事実として再現した「創造博物館」、作者の意図を超えて政治に利用された「カエルのペペ」等々。巻末に「キーワード事典」を完備した本書は、政治の「過去」と「今」を知ることができる最良のガイトブックです。
[本書の内容]
第I部 つくられた歴史から〈構造〉を知る
第1章 集会と虐殺――パブリック・ヒストリーが開いた負の歴史
第2章 コンクリートジャングルのカウボーイ――「歴史修正」の功罪
第3章 妖怪と差別――トラウマと人種主義を「楽しむ」倫理
第4章 ビデオと映画――共感の普遍化と〈構造による人種差別〉
第5章 「トイ・ストーリー」はフェミニズム映画か?――#MeTooと進化するアメリカン・アイデンティティ
第6章 ともに夢見るユートピア――反省と未完のプロジェクト「アメリカ」
第7章 「アウトサイド」の国――周縁から裏返す『ノマドランド』のアメリカ
第II部 つくる現場から〈コミュニケーション〉を知る
第8章 アメリカのカーデモ――コロナ禍のフィールドで声をあげる
第9章 代々木のデモのエスノグラフィー――「フィールド」をつなぎ、「見えない」ものに目を凝らす
第10章 モニュメント・ウォーズ――記念碑をめぐる闘争と記憶する社会運動
第11章 言葉のモニュメント――形のない「記念碑」で記憶する
第12章 かえりみるミュージアム――博物館で/を植民地主義の歴史から脱する
第13章 KポップファンのコンヴァージェンスなBLM――ハッシュタグ・ハッキングと正義の荒らし
第14章 オルタナ右翼のカエル神――「ぺぺ右翼化事件」に見るミームの兵器化とSNSの戦場化
「楽しい政治」のためのキーワード事典
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