ヨーロッパ思想史のなかの自由(長崎純心レクチャーズ)
人間は、他者の強制によらず、自己の自由な選択により行為する。この自由意志論はアリストテレスに現われ、中世アウグスティヌスとトマスにおいて確立されて以降、形を変えながらも近代の思想家に引き継がれ今日までヨーロッパ思想史を貫流してきた。そこでは、自由はすべての人と社会が守るべき絶対的規範として“倫理的力”を持ち、外的行為のみならず個人の内面にまで及んで“政治と非政治の緊張”をもたらす―著者はこの仮説の上に、テクストの歴史的解釈を一つずつ積み重ねることで自由の観念の形成、成熟、変容を具体的に追う。近代が人間を自由にしたとの既成観念を批判し、自由論における中世思想の決定的意味を指摘、その継承と変容として近代思想を探究するとともに現代自由主義の行方をも展望する。従来とは異なるパースペクティヴでヨーロッパ政治思想史を再構成、やわらかな文体で書下ろされた思想史物語。
【目次】
「長崎純心レクチャーズ」について 片岡千鶴子
第一章「自由」の倫理的力──歴史的出自の理論的考察
はじめに
第一節 問題の理由と意図
第二節 仮説と分析枠組
第二章 古代ギリシア・ローマの自由論
第一節 プラトンの「自由」批判
第二節 アリストテレスの政治的自由論と選択意志論
I 政治的自由論 II 選択意志論
第三節 キケロの自由論
第三章 自由意志説の形成と展開
第一節 アウグスティヌス『自由意志について』
[間奏曲1] 自由意志論VS必然論
第二節 トマス『神学大全』の自由意志説と政治論
I 自由意志説 II 政治論
第三節 カリタスと友情(友愛)
I カリタスの作用カ II 政治への対抗原理としての友情(友愛)
第四章 自由意志説の継承と変容
序節 〈政治〉の時代としての近代
第一節 倫理説としての自由意志説の継承と変容
I デカルト II ロック
[間奏曲2] 「近代自然法」
第二節 自由意志論的基礎の上に立つ契約説政治理論
I スアレス『諸法および立法者としての神について』 II 自由意志論によるロック『統治二論』の読解
第三節 モンテスキューにおける自由意志説と自然法論
第四節 〈能力としての自由〉と〈状態としての自由〉の乖離
I ヒュームの自由論──『道徳・政治・文芸論集』を中心に II ルソーの自由論──「社会契約論」まで
第五節 十九世紀以後の自由論
I ヘーゲル「歴史哲学」──「精神」による自由意志の空洞化 II 〈自由主義〉における自由と国家
あとがき
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