ホッブズ 人為と自然 自由意志論争から政治思想へ
17世紀のヨーロッパに生きた思想家は、いくつもの難題に直面していた。人為と自然、精神と物体、そして認識と存在。キリスト教共同体とコスモロジーの動揺は、一方では人間を自己の存在の主体としつつ、他方では存在のもろさを露呈させたからである。しかも、人間存在には強さと弱さが共存するという自覚に、自然についての学の展開が重なり合う。まさにホッブズは、人間は精神を持つ肉体として自ら決定できる、しかし物体の運動には全て法則がある、という両立困難な二側面に正面から向き合った。だからこそ彼は、言語のありかたと物体の運動から根源的に考え抜き、人間の情念にも眼を向ける。そして、決定論を直視しつつも、人為的な秩序を作り出そうと苦闘する。自由意志論争から論を起こし、ホッブズの政治思想における精神の役割を探究する本書は、スコラ哲学の伝統を視野に入れつつ、大陸の合理主義的哲学と共通の地平に立ってホッブズの政治思想を捉えようとする、独創的な業績である。
【目次より】
凡例
序論
一節 問題の所在
二節 研究史
三節 本書の構成
一章 ジョン=ブラモール
一節 自由意志論争の背景
二節 スコラ哲学の継承
三節 ブラモールの政治思想
四節 中世哲学史におけるブラモールの位償づけ
二章 自由意志論争におけるホッブズの視座
一節 研究史と分析視角
二節 自由と強制
三節 熟慮と選択
四節 国家と個人
五節 三つの視座に関する思想史的考察
三章 制作と二つの自然 『物体論』をめぐって
一節 三つの原因概念
二節 運動一元論の難点
三節 制作と二つの自然
四節 制作の条件
四章 情念論とその政治的射程
一節 運動としての位相
二節 主観的経験という位相
三節 人間的位相
四節 情念と政治
五章 政治思想における人為と自然
一節 自然法と理性
二節 日常言語としるし
三節 人為と自然
結論 自然の変容と国家の制作
補論 ホッブズ研究史の一断面
はじめに
一節 ソレルのホッブズ解釈
二節 ザルカのホッブズ解釈
おわりに
註
あとがき
参考文献
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