投票方法と個人主義 フランス革命にみる「投票の秘密」の本質
なにゆえ「投票の秘密」は厳格に要請されるのだろうか? 秘密投票制は、「近代選挙法の公理」とみなされてきた。まさにそれ故に関心をよせられることのなかったこの問いは、近代における個と共同体、個人と民主政治のあり方を考える絶好の素材を提供する。秘密投票制をいちはやく憲法原則として規定したフランス革命を舞台に、固定観念にとらわれることなく、「投票の秘密」という憲法原理が、どのように、なぜ定着していったかをダイナミックに描いた本書は、憲法学、歴史学の双方に新たな視座を提示し、近代個人主義また近代そのものを改めて問いなおす。
【目次より】
はしがき
序章 「投票方法」が描きだすもの 本書の課題
第一節 「投票方法」と個人主義 問題の所在
第二節 「投票方法」研究の意義 「投票の秘密」が描きだすもの
第四節 学説状況 学説の空白
第五節 個別課題 学説の批判的検討をとおして
第一章 喝采による投票 vote par acclamation 全員一致主義と多数決の導入
第一節 喝采による意思決定・批判 アントレグ
第二節 マルエの議員資格審査
第三節 喝采による投票の存続
第四節 時間短縮の手段としての喝采による投票
第五節 喝采による全員一致から筆記による多数決ヘ 教会法をめぐる議論を参考に
第二章 秘密投票 scrutin secret 発声投票の自覚的排除
第一節 筆記投票による「投票の秘密」と現実
第二節 最初の憲法委員会案 旧体制の実践の継承?
第三節 筆記投票による「投票の秘密」の確立
第四節 「投票の秘密」制度化の試み 「集会」における「秘密」投票とその限界
第三章 発声投票vote a haute voix 「自由人の投票方法」
第一節 国民公会議員選挙
第二節 パリ市長選挙
第三節 ジロンド憲法草案
第四節 一七九三年憲法
第五節 発声投票の意義と性格
第四章 「投票の秘密」の憲法への定着 一七九五年憲法と「投票の秘密」
第一節 「投票の秘密」の憲法原則化 一七九五年憲法第三一条
第二節 一七九五年憲法における市民=個人像の現実と理想
第三節 国民公会における「秘密投票」採用の意味
終章 投票方法と個人主義 まとめにかえて
第一節 投票方法と個人
第二節 「投票の秘密」の本質 投票方法と主権原理の「ねじれ」
第三節 投票方法とフランス革命の構造 フランス革命期諸憲法と展望
註(序章─終章)
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