恋慕奉行(下)

猫がコネズミをいたぶるように、阪田権太夫は、お柳を死の淵に追いおとして、ニンマリする。思えば、お柳が出生のときから、すでに権太夫は狙いをつけていたのだ。遠大な野望が権太夫にはある。――野望とは? 慈元寺にひそんで世を呪う、身分高い僧侶、お秋の方に所望した紀州家の秘文書「熊野党調書一件」、将軍・吉宗に不敵な抵抗をする熊野天狗……すべては権太夫の緻密な計算どおりに動いている。お柳を実の子と知りながら、その救出さえ覚束ない名奉行大岡越前守。上司・越前守の古傷を突くのを怖れ、知らず活動がにぶる好漢・半九郎。可憐なお柳の姿を胸に描きながらも――。<上下巻・完結>

©Tsunoda Yoshito

恋慕奉行(下)

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