実践の法理と法理の実践

本書は第1部「実践の法理―司法過程における主体性の理論」および第2部「法理の実践―わたくしの少数意見」からなる。第1部中「判例による法形成」は、著者が最高裁判所裁判官退官後に試みた数回の講演を収録、司法のあり方を多角的に掘り下げたもので、わかりやすく語られており、第2部の少数意見の解説にもなっている。著者が世に問う意欲的な労作である。

【目次】
はしがき
第一部 実践の法理――司法過程における主体性の理論
第一章 裁判官論
第一節 裁判官の良心
第二節 学者と裁判官
第一款 学者的良心と裁判官的良心
第二款 裁判官の椅子――学界からの最高裁判所入りをして
第三款 学問の道と裁判の道――この一筋につながる
第四款 裁判官を助ける者――最高裁判所調査官とアメリカのロー・クラーク
第三節 「法と社会」の動態と裁判官の任務
第一款 「アクションとしての法」の理論――ジェロウム・ホール教授の「法学の基礎」
第二款 社会の現実と司法の運用――イタリアにおける状況
第四節 裁判官と少年審判
第一款 少年審判と法の適正な手続――少年法改正の基礎問題
第二款 少年審判における適正手続の理念
第三款 裁判の「感銘力」――少年審判か刑事裁判か
第四款 少年法の基本理念と少年審判の今後のあり方――少年法施行満三十五年にあたって
第二章 判例による法形成
第一節 「判例」というものについて
第二節 裁判における主体性と客観性
第三節 現代社会における判例の任務
第四節 最高裁判所と日本の裁判
第五節 法的安定性と判例の役割
第二部 法理の実践――わたくしの少数意見
第一章 判例の役割
第二章 憲法の諸問題
第一節 平等の原則(憲法一四条)
第二節 政教分離の原則(憲法二〇条・八九条)
第三節 表現の自由(憲法二一条)および罪刑法定主義(憲法三一条・七三条六号)
第四節 公務員・公共企業体職員の労働争議権(憲法二八条)
第五節 裁判を受ける権利(憲法三二条)と迅速な裁判(憲法三七条)
第六節 自白と補強証拠(憲法三八条)
第七節 二重の危険の禁止(憲法三九条)
第三章 刑法の諸問題
第一節 共犯
第二節 個々の犯罪――定型説の適用
第三節 罪数と行為論
第四節 刑の執行猶予言渡の取消をめぐる諸問題
第四章 刑事訴訟法の諸問題
第一節 刑事訴訟法の基礎理論
第二節 強制処分と証拠法
第三節 上訴および非常上告
第四節 少年保護事件
第五章 民事、行政、労働の分野における諸問題

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